学生の頃、あるいは独身だった時代、友人たちが家に集まると必ずと言っていいほどテレビの前に並び、サッカーゲームを起動したものです。コントローラーを握りしめ、夜遅くまでパスを繋ぎ、シュートの成否に一喜一憂していたあの時間が、今でも鮮明に思い出されます。しかし、社会人になり、日々の仕事や育児に追われる中で、ゲーム機に向き合う時間は自然と減少していきました。最後にサッカーゲームを購入したのは2014年に発売された『ウイニングイレブン2014』。気づけば、そこから12年もの歳月が流れていました。
最近のサッカーゲーム、とりわけ『eFootball』や『EA SPORTS FC』といった作品はグラフィックが実写と見紛うほど美しくなった一方で、操作が非常に複雑化しているという噂を耳にしていました。複雑なボタンの組み合わせによるフェイントや、緻密な戦術設定を瞬時に行うスキルが求められるため、「もう昔のように手軽に楽しむことは難しいのではないか」という先入観を抱いていたのです。しかし、今回Nintendo Switch 2向けに発売された『eFootball™ Kick-Off! -Switch2』を久しぶりに購入してプレイしたところ、その不安は良い意味で裏切られました。オンラインでの対人戦はまだプレイしていませんが、久しぶりにコントローラーを握って遊んだ今作の出来栄えには概ね満足しています。
1. 懐かしい顔ぶれと再会する「ワールドツアー」の興奮
本作を購入して以来、主な対戦相手、そして協力プレイのパートナーとなっているのは小学生の息子です。かつて自分が友人と画面を分け合って遊んでいたゲームを、今度は自分の子どもと一緒にプレイしていることに、不思議な感慨深さを覚えずにはいられません。現在、息子と一緒に最も熱中しているのが「ワールドツアー」と呼ばれるモードです。これはオリジナルのクラブチームを設立し、世界各地の大会を巡りながら強豪チームと対戦し、勝利を収めることで自チームを強化していくやり込み要素の高いモードになります。
このワールドツアーモードをスタートした際、初期メンバーのリストを見て思わず声を失いました。チームの初期メンバーとして、画面に「ミナンダ」や「カストロ」といった懐かしい名前が並んでいたからです。実在する世界的なスター選手ではなく、かつて『ウイニングイレブン』シリーズの「マスターリーグ」というモードにおいて、初期状態の弱小チームに必ず在籍していたコナミオリジナルの架空選手たち。能力値は決して高くないものの、彼らをどうにか使いこなし、なんとかフリーキックやスルーパスで得点を演出していたあの泥臭いプレイの記憶が、一瞬にして頭の中に蘇ってきました。まさか新しいゲーム機であるSwitch 2のタイトルで、再び彼らとピッチに立つことができるとは思ってもみない出来事でした。
このモードでは、息子と2人で同じチームを操作する協力プレイ(Co-op)を進めています。一人がサイドを突破してセンタリングを上げ、もう一人がゴール前でタイミングを合わせてヘディングシュートを放つといった、お互いの呼吸を合わせたプレイが非常に心地よく感じられます。ミスをしたとしても「今のパスは強すぎた」「次はもっと早く走って」といったやり取りをしながら、同じゴールという目標に向かってじっくりとチームを育てていく時間は、何物にも代えがたいオフラインプレイならではの魅力にあふれています。
2. 苦い大敗:日本代表対マドリーチャマルティン
協力プレイでワールドツアーを進める一方で、時には息子と1対1で本気の対戦プレイを行うこともあります。ある日、息子が対戦で使用するチームとして選んだのは「マドリーチャマルティン」。対する私は、慣れ親しんだ「日本代表」を選択して勝負を挑みました。昔取った杵柄で、現役の小学生プレイヤーである息子を軽くあしらうつもりでいたのですが、結果は惨愰たるもので、大敗を喫することになりました。息子の容赦ないプレスと素早いカウンターの前に、私のディフェンスラインは簡単に崩壊し、何度もゴールネットを揺らされてしまったのです。
12年というブランクは思いのほか大きく、かつて友人と切磋琢磨していた頃の指の動きは完全に錆びついていることを痛感させられました。守備のタイミングを誤ってかわされたり、パスコースを読まれてインターセプトされたりと、操作の精度で完全に息子に遅れをとってしまったのです。しかし、大敗したとはいえ、ゲームそのものの進化には驚きを隠せませんでした。特にグラフィックや選手の動き(モーション)の細かさは、自分がプレイしていた2014年当時とは比べものにならないほど向上しています。
選手がターンする際のカッティングの挙動や、トラップした瞬間のボールの跳ね方、スタジアムを埋め尽くす観客のリアルなリアクションなど、テレビ画面の中に本物のスタジアムが存在するかのような錯覚すら覚えます。オンラインでのマルチプレイにはまだ手を出しておらず、リビングでのローカルプレイのみですが、それでも十分にゲームの進化を感じ取り、大人の私でも熱中できるクオリティに仕上がっています。
3. なぜ「マドリーチャマルティン」?偽名チームが存在する大人の事情
ここで、サッカーゲームを久しぶりにプレイした人や、あまり詳しくない人が抱くであろう一つの疑問について調べてみました。それは、息子が使っていた「マドリーチャマルティン」というチーム名についてです。サッカーファンであれば、これがスペインの名門クラブである「レアル・マドリード」を指していることは、ユニフォームの色や所属している強力な選手たちの顔ぶれからすぐに察しがつきます。しかし、なぜ「レアル・マドリード」という実名ではなく、「マドリーチャマルティン」という架空の名称になっているのでしょうか。
この疑問を調べていくと、サッカーゲーム業界における非常に複雑な「ライセンス契約」の仕組みとビジネスの現実が見えてきました。通常、ゲーム内で実在のクラブチーム名やエンブレム、公式ユニフォームを使用するためには、各国リーグやそれぞれのクラブと個別に、あるいは一括してライセンス契約を締結しなければなりません。しかし、ライバルのサッカーゲーム(例えばEA SPORTSが手がける『EA SPORTS FC』シリーズなど)が、特定のリーグや特定のクラブと「独占ライセンス契約」を結んでいる場合、コナミの『eFootball』シリーズは、どれほど望んでもそのチームの実名や公式デザインを使用することができなくなってしまうのです。
そこで、ゲーム内にそのチームを実質的に登場させるために、チーム名やエンブレム、ユニフォームのデザインをオリジナルのもの(偽名)に置き換えるという回避策が取られています。レアル・マドリードのホームスタジアムであるサンティアゴ・ベルナベウが位置する地区の名称「チャマルティン」から名前を取って「マドリーチャマルティン」と名付けられているのも、こうしたライセンス未取得による大人の事情と、ファンへの配慮から生まれた歴史的な名残なのです。調べてみて、現在のサッカーゲームにおけるライセンス契約の複雑さには驚かされました。
興味深いのは、チーム名は偽名であっても、そこに所属している選手たちはすべて「実名」で登場する点です。これは、選手個人の肖像権や氏名の使用権については、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)という組織が一括して管理しており、コナミがこのFIFPROとライセンス契約を結んでいるためです。実名選手が1万9000人も収録されている一方で、クラブ名が架空になるというねじれ現象は、ライセンスの独占契約というビジネス上の理由からきているようです。本作『eFootball™ Kick-Off! -Switch2』にも、このFIFPROライセンスにより1万9,000名以上の選手が実名で収録されており、お気に入りの選手を自分の手で操作する楽しみはしっかりと維持されています。
また、コナミが公式に「オフィシャルパートナーシップ」を結んでいる一部の有名クラブについては、もちろん偽名ではなく完全な実名・公式ユニフォーム・公式スタジアムで収録されています。主なパートナーシップクラブには、以下のような世界的な強豪チームが名を連ねています。
- FC バルセロナ(スペイン)
- マンチェスター ユナイテッド(イングランド)
- バイエルン ミュンヘン(ドイツ)
- AC ミラン(イタリア)
- インテル(イタリア)
- アーセナル FC(イングランド)
- ボルシア ドルトムント(ドイツ)
これらのクラブを選択した際には、実物のスタジアムの造形やサポーターの歌うチャント(応援歌)にいたるまで克明に再現されており、ライセンスが取得されているクラブならではの深い没入感を味わうことができます。
4. 基本無料版『eFootball』と買い切り版『Kick-Off!』の決定的な違い
近年のサッカーゲームの動向を調べていく中で、もう一つ重要な情報を得ることができました。それは、現在多くのプラットフォームで主流となっている基本プレイ無料(Free-to-Play)の『eFootball』と、今回購入したSwitch 2専用タイトル『eFootball™ Kick-Off! -Switch2』との決定的な違いについてです。
スマホやPlayStation、PCなどで配信されている基本無料版の『eFootball』は、その名の通りソフト自体は無料でダウンロードできます。しかし、そのメインコンテンツは「ドリームチーム」と呼ばれるモードであり、プレイヤーは毎週のように更新されるガチャ(選手パック)に課金したり、ゲーム内のイベントを周回したりして強力な選手を獲得し、自分だけの最強チームを編成してオンラインで世界中のプレイヤーと対戦することに特化しています。これは競技性が非常に高く熱中できる一方で、常に最新の強力な選手を追いかけ続けなければならず、ライトユーザーやオフラインでのんびり遊びたい人にとっては、少々ハードルが高く感じられる仕様とも言えます。
これに対し、今回Switch 2向けに発売された『eFootball™ Kick-Off!』は、ゲームソフト自体を最初に購入する「買い切り型(パッケージ版・ダウンロード版)」のタイトルです。この買い切り版には、基本無料版のような課金ガチャ要素はありません。ゲーム内の試合をプレイして得たゲーム内ポイントや、対戦相手から引き抜くといったゲーム内での活動だけでチームを強化していく、非常に健全で完結したゲームデザインになっています。買い切り型でオフラインプレイに特化した今作は、オンラインの激しい競争やガチャ課金に疲れたプレイヤーや、久しぶりにゲームを再開する人にとっても、安心して遊べる選択肢だと感じます。
さらに、本作はファミリー層や久しぶりにサッカーゲームをプレイするユーザーを明確にターゲットにしており、以下のような非常に親切な機能やモードが多数搭載されています。
- かんたん操作モード:緻密な方向キーの入力や複雑なボタン操作を必要とせず、ワンボタンで自動的に最適なパスやシュートアシストを行ってくれる機能です。ゲームに慣れていない子どもや、久しぶりのプレイで操作がおぼつかない大人でも、すぐに試合の形を作ることができます。
- ルビ付きの分かりやすいUI:ゲーム内の選手名やメニュー画面などの日本語表記に、カタカナや漢字のフリガナ(ルビ)が振られています。サッカー選手の外国名や専門用語が多い中でも、小さなお子さんが一人で画面を読んで理解できるような配慮がなされています。
- カジュアルなゲームモード:本格的な11人制の試合だけでなく、狭いコートで手軽にスピーディーな試合展開を楽しめる「6人制サッカー」モードなどが用意されています。少しの時間でサクッと遊びたい時に重宝する仕様です。
オンラインでの激しいランキング戦に身を投じるのではなく、リビングで家族や友人とコントローラーを分け合い、あくまでのんびりとローカルで遊ぶという、かつてのサッカーゲームが持っていた最も暖かい魅力を引き出しているのが、この『Kick-Off!』という作品の最大の特徴なのだと感じます。
ゲームの詳細や購入情報はこちらからご確認いただけます:
5. 世代を超えてパスを繋ぐ、これからのサッカーゲームの楽しみ方
12年ぶりにサッカーゲームを購入し、息子とテレビの前に並んでプレイする中で、私自身のゲームに対する向き合い方にも少し変化が生じたように思います。かつては学生時代の友人たちと集まり、勝敗を巡ってムキになりながら熱中していたサッカーゲームでしたが、長い年月を経て、今度は自分の子どもと一緒に画面を並べて楽しむツールへと変化しました。
オンラインプレイでの白熱した競争も確かに魅力的ですが、オフラインのローカルプレイで、息子のミスをカバーしたり、逆に自分のミスを息子に突っ込まれたりしながら、同じゴールを目指して一喜一憂する時間は、何物にも代えがたい貴重なものです。かつてウイイレで頼りにしていたミナンダやカストロという相棒たちと再びピッチに立ち、新しいゲーム機であるSwitch 2の鮮明なグラフィックの中で走り回る姿を見ていると、ゲームが持つ「懐かしさ」と「新しさ」の融合を強く実感させられます。
まだ試していないオンラインプレイにも、いずれ気が向いたら挑戦してみるかもしれませんが、当面は息子とのワールドツアーで、世界中の強豪チームを相手にじっくりと我がチームを鍛え上げていく予定です。久しぶりにゲーム機を起動し、家族で楽しむエンターテインメントとしてのサッカーゲームの価値を、今作を通じて改めて見出すことができたと感じています。