みなさんはサッカーの試合をテレビや配信で観るとき、どんな解説が好きですか?
一般的にサッカーの解説といえば、元プロ選手や専門家が戦術を論理的に分析したり、ピッチ上の出来事を客観的に説明してくれたりするものが主流ですよね。
でも、2022年のカタールW杯、そして現在開催中の2026年北中米W杯にいたるまで、私たちの「サッカー解説」に対するイメージをガラリと変えてしまった人物がいます。日本代表として活躍した、本田圭佑さんです。
先日のオランダ戦(2-2の激戦)でも、NHKの現地解説として出演した本田さんの忖度のない“居酒屋解説”がSNSで即トレンド入り。実況とのテンポの良い掛け合いや予測不能な本音トークに、思わずテレビにかじりついた人も多いのではないでしょうか。戦術の勉強になるという以上に、純粋に「エンタメとして面白い」のが大きな魅力です。
なぜ彼の解説は、コアなサッカーファンだけでなく、普段あまりサッカーを観ないライト層の心まで掴んでしまうのか。2026年大会の最新エピソードも交えながら、私たちが本田さんの解説を好きになってしまう理由を4つのポイントに整理して語ってみたいと思います。
理由①:実績があるのに「選手を『さん』付け」で呼ぶ謙虚さとフラットさ
日本代表のエースとして長年チームを牽引し、W杯3大会連続ゴールという記録を成し遂げた本田氏。
それほどの実績を持つ選手でありながら、解説の席に座った彼は、ピッチ上の現役選手たち(しかもその多くは自分より若い後輩たち)を当たり前のように「三笘さん」「堂安さん」「前田さん」と呼びます。これに新鮮な驚きを覚えた方も多いはずです。
日本のスポーツ界では先輩が後輩を呼び捨てにする文化が根強く残っていますが、本田さんはこの「さん付け」の理由について、放送中や自身のSNSでこのように語っていました。
「ビジネスの世界では『さん』付けが普通じゃないですか。だからサッカー界も普通にそう呼ぶべきだと思うんです」(※面識がある選手はあだ名や呼び捨て、そうでない選手は敬意を込めて「さん」と呼ぶ独自のルールを敷いていました)
自分がどれだけ実績を残した先輩であっても、今まさにピッチで戦っている選手たちを「一人の独立したプロフェッショナル」として対等に扱い、リスペクトを払う。このフラットで合理的なスタンスが心地よく、彼の魅力に繋がっています。
理由②:強豪国を過剰にリスペクトしない「いい意味で欧州かぶれではない」視点
もう一つ、本田さんの解説を聞いていて気持ちが良いのが、「相手が強豪国だからといって、無条件に平伏したりしない」という点です。
サッカー界には、ヨーロッパや南米の強豪チームや有名選手に対して、どこか畏れ多く接してしまうような空気感が少なからず存在します。しかし、世界中を渡り歩いて戦ってきた本田さんに過剰な忖度はありません。
過去大会のコスタリカ戦でのフレーズ、「コスタリカ、強ないぞ!」はまさにその象徴でした。
相手の知名度や歴史、世間の前評判に惑わされることなく、今目の前のピッチ上で起きているプレイの質をそのまま観察します。「あそこの背番号〇番が穴だから、もっと攻めた方がいい」「このクオリティなら日本は普通に勝てる」と、ピッチレベルの事実に基づいた率直な評価を下します。
ACミランで10番を背負い、世界のトップレベルと対等に渡り合ってきた彼だからこそ説得力がある「変なリスペクトをしない」という姿勢。それは、日本サッカーが本気で世界一を目指すために必要なメンタリティそのものを、私たちに見せてくれているようでもあります。
理由③:「あえて下調べをしていない?」視聴者の代弁者としての素朴な問いかけ
多くの解説者は、試合前に相手チームや対戦相手のデータを徹底的に調べ上げ、それをスマートに披露しようとしがちです。
一方で、本田さんの解説はどこか「下調べをあえて最小限に留めている」ように見える瞬間があります。実際、一部でささやかれた「本当は知っているのに知らないふりをしているのでは?」という疑惑に対して、本田さんは番組で**「いや、9割本当に知らないですね」**と即答して話題になりました。
オランダ戦でも、選手情報について実況に素直に尋ねたり、飲水タイムに「これ(このタイミングの飲水)何すか?」と問いかけたりする姿が印象的でした。
これが解説者としてマイナスかというと、実はまったく逆です。解説者が「すべてを知っている万能の存在」として上から目線で語るのではなく、視聴者と同じ視点に立って、今ピッチで起きている素朴な疑問をその場でストレートに聞いてくれる、すなわち「視聴者の最高の代弁者」になってくれているのです。
わからないことは「わからない」と素直に認め、純粋な好奇心で試合を楽しむ。だからこそ、サッカーに詳しくないライト層でも置いてけぼりにされず、まるで居酒屋で一緒に盛り上がっているかのような不思議な一体感と臨場感を味わうことができます。
理由④:生放送で炸裂する、人間味あふれる「本音と名言」の数々
そして何より、感情がストレートに伝わる、人間味あふれるリアクションが魅力的です。前回のカタールW杯、そして今回の2026年大会でも、数々の名言が生まれています。
- 「11番(ガクポ)がウザい」(2026年オランダ戦にて。日本の守備陣を苦しめるキーマンを本音で警戒する一言)
- 「4分? 4分は長いな……」(カタールW杯時、後半アディショナルタイムの長さにハラハラする様子)
- 「うざいなぁ、半自動」(カタールW杯時、厳格すぎるテクノロジー判定でゴールが取り消されたときの、ファンの本音を代弁した一言)
- 「コスタリカ、普通に守備固いな……強ないって言ったけど、撤回します(笑)」(自分の前言をあっさり翻して笑いに変える柔軟さ)
解説者としての「体裁」を整えることよりも、「日本に勝ってほしい」「良いプレイが見たい」という、一人のサッカーファンとしての熱量が勝っています。また、オランダ戦のハーフタイムには「スタジアムのトイレの数が少ない」といった、現地にいる本田さんならではのリアルな情報も飛び出しました。
専門的な戦術分析の鋭さを見せつつも、感情の起伏をそのまま電波に乗せてくれるからこそ、ピッチ上の緊張感がリビングにそのまま伝わってくるのです。
まとめ:本田圭佑の解説は、ビジネスパーソンのヒントにもなる?
本田圭佑さんの解説は、単に「試合の状況を説明する」という役割を大きく超えています。
- 相手が誰であってもリスペクトを忘れない「フラットな姿勢」
- バイアスや肩書きに惑わされない「客観的な観察力」
- わからないことを恥じずに聞く「素直な知的好奇心」
- 自分の非をすぐに認める「柔軟さ」
こうして整理してみると、彼の解説の魅力は、私たちがビジネスや日常生活で心地よい人間関係を築く上でも、非常にヒントになるエッセンスが詰まっていることに気づかされます。